『バイオハザードRe3』感想 ~自立した女性キャラクター その⒉ ~
<ブログ要約>
<本文>
ジル・バレンタインの原型は、『エイリアン』の
主人公“リプリー”である
ジル・バレンタインは、“戦う”自立した女性キャラクターとして作中で描かれます。その女性キャラクターの原型とも言える映画作品の一つに『エイリアン』(1979)が挙げられると思います。映画『エイリアン』の主人公であるリプリーは、自立した女性キャラクターとしてフェミニズム観点から高い評価を受けているみたいです。私はこの映画を幼い時に見ましたが、楽しんでいたと同時にトラウマでした(笑)。特に男性の腹からエイリアンが飛び出てくるシーンは今見ても衝撃的です。
話に戻りますが、フランス文学者の内田樹さんによると、主人公リプリーは「白馬の王子さまの救援を待たず自力でドラゴンを倒す自立した「お姫様」です。」(内田 61 強調筆者)だそうです。リプリーは、エイリアン掃討における孤独の死闘において、「女であること」は利益も不利益ももたらすことがありません。内田さんによると、リプリーはハリウッド映画がはじめて造型に成功した「ジェンダー・フリー」ヒロインだそうです。さらにリプリーは、これ以後、ジョディ・フォスター、デミ・ムーア、メグ・ライエン、サンドラ・ブロック、ジュリア・ロバーツらが演じることになる「男性の暴力に決して屈しない自立し、自己決定するヒロイン」の原型となったそうです(同上)。『バイオハザードRe3』のジル・バレンタインもゾンビやクリーチャーと戦う姿が描かれます。ゾンビやクリチャーは、暴力で屈服させようとする”エイリアン”と重なると考えられます。そしてジルもまた、自力で様々な試練に立ち向かい、暴力に屈服しない姿はリプリーと重なるところがあると思います。
★“性差別主義者”であるニコライ・ジノビエフ
作中においてニコライ・ジノビエフは、ジル・バレンタインを“差別”し続けます。ニコライは現実の世界でいえば、極めて保守的でセクシスト(性差別主義者)であり、金が全てだという資本主義の権化みたいなキャラクターです。現代の闇がすべて集約されたキャラクターがニコライです、まるでどこかの大統領みたいなキャラクターです(笑)。図に分かるようにニコライは、「この女は足手まといになるだけだ」「ここぞという時に引き金すら引けない」とジルを常に“弱い者”として軽蔑しています。
さらに後のストーリー展開において、ニコライはジルをアンブレラ社との取引に利用しようとし、ジルのことを“道具”あるいは“大金になる”ものとしてしか考えていないキャラクターであることが明らかになります。
カルロスはジルのことを一人の人間として扱い、ニコライとは対照的なキャラクターです。カルロスは、ゾンビが徘徊しパニックが起きている街においても市民を救助することを第一としています。ストーリーの序盤では、ジルに対して“レディ”呼ばわりしたり、過保護すぎるシーンがあります。しかし、ジルが命がけで戦う姿を見て、彼女への見方が段々と変化していきます。
後に同僚のタイレルに「あのセクシーな連れも?」とからかわれた時も、カルロスは「彼女はそういうんじゃない。素晴らしい警官だ」と言い切ります。カルロスはジルの外見ではなく、警官としての能力や正義感を高く評価し、内面を見るようになって行くのです。
ちなみにカルロスは、原作と大幅にキャラクターデザインが変更されています。原作のほうは、ブラジル系ということで褐色の肌に、明るい陽気なキャラクターでした。今回のリメイク作品では髪形がパーマになり、性格も真面目なキャラクターとなっています。
<参考文献>