『バイオハザードRe3』感想  ~ 自立した女性キャラクター その⒊ ~

 <ブログ要約>

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<本文>

女性差別主義者との闘い

~ジルを屈服させようとするクリーチャ~

 『バイオハザードRe3』は、女性差別主義者たちとの闘いのように感じましたゾンビ=性的欲望の象徴として解釈できるからです。ゾンビ、クリーチャーなどからの攻撃やバイオハザードシリーズ恒例の死亡集には、Youtubeに投稿されていますが、今回のジルが死ぬシーンは極めて“男性的な暴力(性的な暴力)”が象徴されているように感じます。ジル・バレンタイン(自立した女性キャラクター)ゾンビ・クリチャー(ジルを屈服させようとする家父長制的な男性性)のあいだのデス・マッチという図式が見られます。

https://www.youtube.com/watch?v=I5tNK6akS0o)←死亡動画まとめ

 ※苦手な方はご注意ください。

 

★ドレインディモス ー “男根”と“妊娠”の象徴

 ドレインディモスは、性的攻撃を象徴したクリーチャーと言えるでしょう。図にあるようにジルは、ドレインディモスから粘液まみれの触手をおもいっきり口に突っ込まれ、体内に幼虫を埋め込まれます。この触手は、明らかに“男根”の象徴です。ちなみに体内に虫が埋め込まれてゲームオーバーになると、ジルの腹から虫が吹き出してきてゲームオーバーになります。これは“妊娠”“出産”の象徴ですし、無理やり口に突っ込まれるのは“性的な暴力”のシンボルとして捉えることができるでしょう。

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(↑無理やり口に突っ込まれ、体内に幼虫を植え付けられるシーン)

 

★“マッチョイムズ”の具現化であるネメシス

 ネメシス“マッチョイムズ”[1]が具現化した存在だと言えるでしょう。ネメシスは、人間離れした図体と腕力の持ち主で、さらにバズーカ砲を持ってジルをしきりにストーカー(追跡者)してきます。図に分かるように攻撃しても自己修復を繰り返し、何度もジルを追跡し触手で攻撃してきます。ジルを力でねじ伏せようとし、マッチョな腕で攻撃してきたり、触手(ファルスのシンボル)で掴んだり突き刺してきたりし、ある種の“性的暴力”のシンボルと考えられます。作中において、ジルはこのような暴力と真っ向から闘いを挑みます。

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(↑触手で攻撃し、さらに何度も自己修復を繰り返す)

 ★ネメシスとエイリアン

 ネメシスはジルに攻撃され続けられると、形態変化をして外見がまるで映画のエイリアンのようになっていきます。エイリアンの外見は、内田樹さんによると男根”を象徴したモンスターであるそうです。内田さんはエイリアンの外見に関する“男性の性的攻撃”の記号について以下のように述べています。

 

H・R・ギーガーの造型したエイリアンは、その男根状の頭部を見るまでもなく、攻撃の前に口元から滴らせる半透明の液体、純粋な攻撃性、自己複製を作り出すことへの飽くなき欲望といった徴候から分かるとおり、男性の性的攻撃の記号です。(内田 62 強調筆者)

 

 つまり、内田さんによるとエイリアンの頭は“男根”を象徴し、さらに口から垂らす液体は精液”を表したものであり、男性の性的欲望を具現化したものであるそうです。ネメシスはデザインだけでなく、ジルを何度でも追いかけ回し自己修復する姿は、エイリアンと重なるところがあると考えられます。したがって、ネメシスもジルを屈服させようとする家父長制的な男性性、あるいは性的攻撃のシンボルとして解釈できると思います

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(↑右:ネメシス形態変化、左:エイリアン 極めてデザインが類似

 

 作中におけるジルとネメシスとの決戦は、極めて爽快的です。ジルがレールガン(ファルス[2]の象徴)を手にしてぶっぱなし、ネメシスが粉砕されます。こうして自立性を屈服させようとする家父長制的な男性性は敗れ、ジルの勝利に決まるのです。

ちなみに、性差別主義者であったニコライも最終的にはジルに倒され、ラクーンシティに落とされるミサイルと共に消え去ります。ニコライはアンブレラ社の黒幕の正体を明かす代わりにジルに命乞いをし、「後悔するぞ。俺が死んだら真相は闇にほうむられるんだぞ」と言います。しかし、ジルはニコライの言葉に耳を傾けず、「それくらい明らかにして見せるわ」と言います。このようにジルは、ニコライ(男性)の力を借りることなく、自力でアンブレラ社と戦うことを決意します。ここにジルは自立性のあるキャラクターが確立します。

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    (↑レールガンでネメシスと最終決戦をするシーン)

 ラクーンシティを脱出したヘリの中で、ジルは「無数の命を奪ったのは“怪物をつくるウィルス”ではなく、人間の欲望だ」と物思いにふけ、物語は幕を閉じます。この“欲望”とは様々な解釈ができると思いますが、怪物よりも“人間が一番恐ろしい”というありきたりのテーマではありますが、ものすごく考えさせるストーリーだったと思います。

 

[1] 男らしさや男性としての魅力や特徴を誇示し、「男性優位主義」の言説や主張を重んじる考え方

[2] 男性器官をかたどっているものを表しているもの。精神分析では、ペニスが肉体的実在としての男性器官を示すのに対し、象徴的意味を強調する。

 

<参考文献>

内田樹『映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想』文春文庫、2011年